ダウンバーストから家を守る屋根
〜突然現れるダウンバーストと屋根被害の関係〜
近年、ニュースで「ダウンバースト」という言葉を耳にする機会が増えてきました。
突然、空が暗くなり、短時間だけ猛烈な風が吹く気象現象です。
そして、その狭い範囲だけで屋根やカーポートが大きな被害を受ける。
「台風ではないのに、なぜこんな強風が起きるのか?」
実はダウンバーストは、台風とはまったく性質の異なる気象現象です。
そして屋根にとっては、時に台風以上に激しい風になることがあります。
今回は、ダウンバーストとは何か、台風との違い、実際に起きる屋根被害、そして屋根側で出来る対策について解説します。
1.ダウンバーストとは何か
台風の正体は低気圧ですが、ダウンバーストの正体は、積乱雲の中で発生した強い下降気流です。
積乱雲の中には、雨粒や雹(ひょう)や氷粒が存在し、雨粒が蒸発する際に空気の熱を奪い冷たい空気の塊が発生します。
その冷たい空気の塊が重力によって一気に落下し下降気流になります。
そしてその空気の塊が地面に衝突し、放射状に突風となって吹き広がるのがダウンバーストなのです。次の図はダウンバーストのイメージ図です。
特に夏場の積乱雲やゲリラ豪雨の際に発生しやすく、短時間で局地的に非常に強い風を生みます。
瞬間風速は、時に30〜50m/sを超えることもあり、台風並み、あるいはそれ以上の瞬間風速になる場合もあります。
台風と大きく異なるのは「発生範囲」と「発生時間」です。
台風が広い範囲に長時間影響を与えるのに対し、ダウンバーストは数km程度の非常に狭い範囲で発生します。
そのため、
・ 隣町では晴れている
・ 数百m離れると被害がない
・ 局地的にだけ屋根被害が集中する
といった特徴があります。
まるで「風の爆発」がピンポイントで起きるような現象なのです。
このダウンバーストは、発生範囲の広さにおいて分類されます。
風の広がりが4km未満をマイクロバースト、4km以上をマクロバーストと分類します。
局地的なマイクロバーストでは、エネルギーが狭い範囲に集中するため、局部的に非常に強い風となる場合があります。
マイクロバーストでは、茨城県の下館市で1996年に発生した下館ダウンバーストが最大級で、風の強さはF2相当、推定50〜69m/sとされています。
ちなみにF2は竜巻やダウンバーストの強さをあらわす「藤田スケール」での分類です。
F2の突風では、「住家の屋根がはぎとられ、弱い非住家は倒壊する。大木が倒れたり、ねじ切られる。自動車が道から吹き飛ばされ、汽車が脱線することがある。」とされています。
2.台風と違い、予測が難しい風
ダウンバーストが厄介なのは、「事前準備がしにくい」という点です。
台風の場合は、進路予測があります。
数日前から、
• 飛びやすい物を片付ける
• 雨戸を閉める
• 屋根を点検する
といった準備が出来ます。
しかしダウンバーストは違います。
積乱雲の発達とともに突然発生するため、局地的で発生予測が難しく、避難準備や事前対策が間に合わないこともあります。
さらに特徴的なのが、「風向が急激に変化する」という点です。
台風では比較的一定方向から風が吹くことが多いですが、ダウンバーストでは下降した風が地面で広がるため、場所によって風向が複雑になり、乱流が発生すると局所的に大きな負圧力を持った剥離渦が発生しやすくなります。
これは屋根にとって非常に厄介です。
また、短時間で急激に風圧が変化するため、屋根材の浮き上がりや、端部への局所的な負荷が大きくなるケースもあります。
ニュースで、
「突然屋根が飛んだ」
「一瞬でカーポートが壊れた」
という被害が出る背景には、このような風の特徴があります。
ちなみに台風で被害が出る風向は南風が多いです。
次の図は、台風の衛星画像に風向と進行方向を書き加えた図です。
日本での台風の進路は多くの場合、太平洋から北上して上陸する為、台風の南から北への移動速度と台風の風速が加算され、風速が高くなり被害が大きくなるという理屈です。
北半球に発生する台風は反時計回りの風向なので、台風の中心からやや東側が最も風が強いというセオリーがありますが、ダウンバーストはいつどこで発生するのか予測が困難であり、放射状に広がるので風向もバラバラなのです。
3.ダウンバーストで起きる屋根被害
台風が「広域的に吹き続ける風」だとすれば、ダウンバーストは「地面に衝突した風が爆発的に広がる突風」とも言えます。
ダウンバーストによる屋根被害は、一般的な台風被害と似ている部分もありますが、特徴的な壊れ方をする場合があります。
特に多いのが、
• 棟板金の飛散
• 屋根端部のめくれ
• 軽量屋根材の浮き上がり
• カーポート屋根の破損
• 軒先部分、ケラバ部分の局部破壊
などです。
屋根は風が「押す力」だけではなく、「引き剥がす力」にもさらされます。
特に屋根の端部や角部では、飛行機の翼のように風が流れることで負圧が発生し、屋根材を上方向へ引っ張る力が生じます。
そしてダウンバーストでは、下降気流が地面に当たり、水平方向の突風になるので真横から風が住宅の外壁に当たります。
外壁に当たった風は上昇気流となり、屋根端部では大きな負圧が発生します。
屋根端部で乱流が発生すると瞬間的に非常に大きな負圧となり、屋根端部がめくれあがったり、飛散してしまうのです。
次の図は建物周りの風の流れと外圧変動を示したものです。
また、築年数が経過した屋根では、
• 釘の緩み
• 下地材の劣化
• 固定力低下
などが進んでいることもあり、普段は問題なく見えていても、突発的な暴風で一気に被害化するケースがあります。
さらに注意したいのは、「屋根材そのもの」だけではありません。
一部が飛散すると、
• 防水層が露出する
• 雨漏りにつながる
• 飛散物が周囲へ被害を与える
といった二次被害も発生します。
屋根の被害は、単なる外装被害では済まないことも多いのです。
屋根が風で飛散する理由は「「風から家を守る屋根」」に詳しく解説しています。
4.屋根側で出来る対策とは
ダウンバーストそのものを防ぐことは出来ません。
しかし、屋根側で「被害を受けにくくする」ことは可能です。
最も重要なのは、「固定力」です。
この固定力については、「風から家を守る屋根」や「台風から守る家(前編)」「台風から守る家(後編)」で詳しく解説しています。
屋根側で出来る対策は、風による負圧を設定し、その設定負圧以上の固定強度で屋根に固定することが被害を受けにくくする基本的な考え方です。
この屋根にかかる負圧の設定ですが、地域によって基準が変わります。
地域ごとに定められた基準風速を元に住宅の屋根高さや屋根勾配により必要な固定耐力が計算できます。
この基準風速に関しては基本的に台風の影響を考慮して決めています。
つまり、台風の影響を強く受ける地域では基本的に基準風速が高く、必要耐力も高くなるのです。
ただし、ダウンバーストは台風とは異なり、地域が限定出来ません。
つまり、台風被害が無い地域でも台風以上の風が吹く可能性があるのです。
近年は、気候変動の影響もあり、局地的豪雨や局地的な突風の発生頻度が増えているとも言われています。
地球温暖化現象から熱帯的な気象条件になってきた日本では、ダウンバーストなど地域に限らずに発生する強風にも耐えうる高い固定強度が求められるようになってきたと思います。
“突発的な暴風への備え” が求められる時代になってきたのかもしれません。
5.まとめ::ダウンバーストを知って、対策する
今回のコラムのポイントは次です。
ダウンバーストは台風以上の風が発生することがある
台風と同様に屋根端部には強い負圧が発生し屋根材が飛散するリスクが高い
ダウンバーストは台風と異なりどんな地域でも発生する
ダウンバースト対策は台風被害の無かった地域でも強風に耐えられる高い固定強度が求められる
今回のコラムでは、最近ニュースで耳にするようになったダウンバーストを屋根からの視点で書いてみました。
ダウンバーストは、台風とは異なる局地的な暴風現象です。
予測が難しく、短時間で猛烈な風が吹くため、突然屋根被害が発生することがあります。
そして屋根は、単に雨を防ぐだけではなく、こうした自然の力から家を守る重要な役割を担っています。
近年の異常気象を考えると、「過去に大丈夫だったから安心」とは言い切れない時代になってきました。
ダウンバーストから家を守るためには、突風でも飛散しない屋根の設計と屋根材の選定が重要になるのです。
これからも、屋根コラムで後悔しない屋根材選びをするために、出来るだけ分かりやすさを心がけて科学的な根拠を持った情報をより多く発信していきたいと思います。
