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アスファルトシングルはどんな屋根材なのかを技術者が解説

アスファルトシングル

北米で圧倒的なシェアを持つアスファルトシングルってどんな屋根?

日本の住宅で使われている屋根材というと、粘土瓦や化粧スレート、金属屋根を思い浮かべる人が多いと思います。

一方、北米の住宅で広く使われているのが「アスファルトシングル」です。アメリカでは住宅用屋根材として約8割のシェアを占めるともいわれる代表的な屋根材ですが、日本でのシェアはそれほど高くありません。

アスファルトシングルは、ガラス繊維を芯材としてアスファルトで被覆し、表面に彩色された石粒を付着させた屋根材です。

粘土瓦や化粧スレート、金属屋根とは材料も構造も大きく異なります。

今回は、アスファルトシングルがどのように誕生し、日本に普及してきたのか、その歴史や材料、特徴、耐久性について解説します。

1.アスファルトシングルの歴史-アメリカで生まれた屋根材

アスファルトシングルの原型は、1860年代のアメリカで考案されたとされています。

当時使われていた砂付きルーフィングを小さく切り、ウッドシングル(木製屋根材)や天然スレートのように重ねて葺くという発想から生まれました。

その後、20世紀初頭には現在のアスファルトシングルにつながる製品が作られるようになります。

アメリカでは19世紀後半から石油産業が急速に発展し、石油から得られるアスファルトを利用したさまざまな建築材料が作られるようになりました。アスファルトシングルも、こうした時代背景の中で誕生した化学系の屋根材です。

初期の製品では綿布や紙、木材パルプなどが芯材として使われていましたが、1970年代以降はガラス繊維マット(ファイバーグラス)への移行が進みます。

ガラス繊維を芯材とすることで強度や耐久性、耐火性などが向上し、現在のアスファルトシングルの基本的な構成が確立されました。

日本では1955(昭和30)年に、田島ルーフィングがアメリカから製造技術を導入して国内生産を開始しました。

軽量で比較的安価な屋根材だったことから住宅にも採用され、1960年代末にはカナダなどから輸入された製品も使われるようになりました。

意外に思われるかもしれませんが、日本でもアスファルトシングルには70年以上の歴史があります。

しかし、その後の日本ではアメリカのような主流の屋根材にはなりませんでした。

その大きな理由のひとつが防火規制です。

アスファルトを主原料とするため、当時の建築基準法における防火上の制約を受け、日本での普及が進みにくい時代が長く続きました。

その後、芯材をガラス繊維とした製品が開発され、さらに2000年の建築基準法改正によって性能規定化が進みます。

屋根材そのものが不燃材料であるかだけではなく、屋根として飛び火に対して必要な防火性能を持っているかを試験によって評価できるようになりました。

飛び火試験によって必要な性能が確認されたアスファルトシングルが使用できるようになり、日本でも再び普及する環境が整っていきました。

2.アスファルトシングルは何でできている?

アスファルトシングルは、粘土を焼成する粘土瓦、セメントを主原料とする化粧スレート、鋼板などを使用する金属屋根とは異なる構成を持つ屋根材です。

現在の一般的なアスファルトシングルは、主に「ガラス繊維マット」「アスファルト」「表面石粒」の組み合わせでできています。

芯材となるガラス繊維マットは、屋根材の骨格として形状や強度を保持します。

そのガラス繊維マットにアスファルトを浸透・被覆させることで、防水性を持たせています。

さらに表面には彩色された鉱物質の石粒が付着されています。この石粒は屋根の色や質感を作り出すだけではなく、紫外線などからアスファルトを保護する役割も持っています。

つまり、

「ガラス繊維=骨格」

「アスファルト=防水」

「表面石粒=耐候性と意匠」

という、それぞれ異なる役割を持った材料を組み合わせた複合屋根材です。

アスファルトシングルの基本的な材料構成を示す模式図
アスファルトシングルの基本的な材料構成(模式図)

3.アスファルトシングルの特徴

アスファルトシングルの大きな特徴のひとつが軽さです。

製品によって異なりますが、代表的な製品では1㎡あたり約11kg程度です。

一般的な陶器瓦が約46kg/㎡、化粧スレートが約20kg/㎡と比較すると、非常に軽量な屋根材であることが分かります。

粘土瓦や化粧スレートのような硬質の屋根材とは異なり、アスファルトシングルには柔軟性があります。

そのため衝撃によって割れにくく、切断や加工もしやすいという特徴があります。

アスファルトシングルの場合、普通のはさみやカッターナイフで切断が可能です。

屋根下地に釘などで固定し、製品や施工部位によって接着材などを併用して施工します。

アスファルトシングルは、屋根上で工作をする感覚で施工が出来ます。

住宅オーナーがDIYで住宅をメンテナンスするアメリカの住文化にマッチする施工性の高さが、アメリカにおける圧倒的なシェアを持っている要因の一つなのではと思います。

曲面などの複雑な屋根形状にも比較的対応しやすく、さまざまな形状の屋根にも使用することができます。

アスファルトシングルは、材料そのものに防水材料であるアスファルトを使用しています。

屋根材を重ねながら施工することで雨水の浸入を防ぐ構造になっています。

表面には彩色された石粒が使用されています。

単色ではなく複数の色を組み合わせた製品も多く、石粒と屋根材の重なりによって独特の陰影が生まれます。

粘土瓦の重厚感、金属屋根のシャープさとは異なる、柔らかな表情を持つ屋根を作ることができます。

写真では、アスファルトシングルの屋根外観が確認できます。

アスファルトシングルの屋根外観
アスファルトシングルの屋根外観

また、その軽さと加工性から、既存の化粧スレート屋根などの上から新しい屋根材を施工する「カバー工法」に使用されることもあります。

4.耐久性と日本での普及

アスファルトシングルは、紫外線や熱、雨、風などに長期間さらされることで徐々に劣化します。

代表的な経年変化として、表面石粒の脱落、アスファルトの硬化、反り、ひび割れ、剥離、苔などがあります。

特に表面の石粒は、屋根材の意匠だけでなくアスファルトを紫外線から保護する役割を持っているため、長期的な耐久性を考えるうえでも重要です。

CASBEE-すまい[戸建]2007年版では、アスファルトシングル葺きの屋根材について30年程度の耐用年数が示されています。

ただし、実際の耐久性は製品の仕様だけでなく、日射や温度、降雨、風などの使用環境、屋根勾配、施工状態などによって変化します。

また、初期の紙や木材パルプなどを芯材とした製品と、現在主流となっているガラス繊維を芯材とした製品では材料構成が異なるため、アスファルトシングルをひとまとめにして耐久性を評価することには注意が必要です。

一方、日本では長期間にわたって防火上の制約などがあったことや、粘土瓦、化粧スレート、金属屋根などが広く普及してきたことから、そのシェアは限定的でした。

近年では輸入製品を中心に採用が増え、住宅用屋根材に占める割合も拡大しています。

軽量で加工しやすく、複雑な屋根形状にも対応しやすいことに加えて、既存屋根のカバー工法にも使用できるため、今後は新築住宅だけでなく屋根の改修市場でも一定の需要が見込まれます。

一方、長期間使用する屋根材としては、表面石粒の脱落やアスファルトの経年劣化、強風時の剥離などにも注意が必要です。

アスファルトシングルの柔軟性は、加工や施工のしやすさにつながる一方で、耐風性を考えるうえでは注意が必要です。一般的にアスファルトシングルは重なり部を釘などで固定し、軒先側先端部裏面で接着することで強風時の負圧に耐える構造です。

しかし、裏面での接着が十分でないと、釘固定位置から離れた先端部は風圧力によってめくれ上がる可能性があります。

私自身、アスファルトシングルを使用した屋根の散水送風試験に立ち会った経験がありますが、先端部裏面の接着が不十分な場合、風速30m/sで先端部が大きくめくれ上がる現象を確認しています。

このような経験から、台風などの強風が作用する日本でアスファルトシングルを使用する場合には、屋根材の柔軟性を考慮した固定方法が非常に重要だと考えています。特に、屋根材裏面と屋根材表面との接着工程は重要であり、風によるめくれ上がりを抑える施工方法が適切に行われる必要があります。

5.まとめ

アスファルトシングルについて、今回のポイントをまとめます。

  • アスファルトシングルの原型は19世紀後半のアメリカで誕生した
  • ガラス繊維を芯材としてアスファルトで被覆し、表面に石粒を付着させた複合屋根材である
  • 日本では1955年に国内生産が始まり、70年以上の歴史がある
  • 日本では防火上の制約などから長期間普及が進まなかった
  • 2000年の建築基準法改正による性能規定化などによって使用しやすい環境が整った
  • 軽量で柔軟性があり、加工しやすいことが大きな特徴
  • CASBEE-すまい[戸建]2007年版では、耐用年数30年程度とされている
  • 経年によって石粒の脱落、アスファルトの劣化、反り、ひび割れなどが発生することがある
  • 北米では代表的な住宅用屋根材だが、日本では現在も比較的シェアの小さい屋根材である

アスファルトシングルは、粘土瓦や化粧スレート、金属屋根とはまったく異なる材料構成を持つ屋根材です。

特に「軽く、柔らかく、防水性を持つ」という特徴は、ほかの主要な屋根材にはないアスファルトシングルならではのものです。

アメリカで生まれ、日本にも70年近い歴史を持ちながら、防火規制などによって長期間主流にはならなかったアスファルトシングル。

近年では、軽量性や施工性、カバー工法への適性などが評価され、日本でも少しずつ採用が広がっている一方で、台風などの強風に対する飛散事例などについては、原因の究明や対策など、今後十分に考慮する必要があります。

次のコラムでは、「アスファルト防水・シート防水(陸屋根)」について解説します。

勾配屋根とは異なる陸屋根では、どのような方法で雨水の浸入を防いでいるのでしょうか。アスファルト防水やシート防水の材料と仕組み、それぞれの特徴について紹介します。

筆者紹介

ルーフ エンジニア 小栗

ルーフ エンジニア 小栗

甍エンジニアリング株式会社 代表取締役社長/屋根発明家/「タイルーフ」開発者

屋根の技術に携わり37年。

これまで多くの屋根材を開発してきた屋根技術者で防災平板瓦を発明し日本の発明家46位にランキングされた経歴がある。

これから家を建てる方、屋根のリフォームを考えている方に、屋根に興味を持ってもらい、後悔しない屋根選びをして欲しいという思いから「屋根コラム」の執筆をスタートした。

出来るだけ分かりやすく科学的な根拠を持った屋根コラムを心がけている。

屋根に関する様々なことを定性的、定量的に捉え、屋根の技術者として「こだわりの屋根コラム」を高い熱量で執筆している。

1966年10月生まれ・天秤座・O型。

趣味は音楽制作・楽器演奏・歌唱。バンドではベース、ボーカル等を担当。演奏楽器はギター、キーボード、ハーモニカ、ウクレレ、三線など多岐にわたるマルチプレーヤー。楽曲製作では、作詞、作曲、アレンジ、打ち込み、演奏、録音、ミックス、マスタリングと全ての制作プロセスを一人で行う。

好きなミュージシャンはプリンス、XTC、コステロ、デビッドボウイ、カーズ、ELO、EW&F、佐野元春、大滝詠一、坂本龍一、YMO、山下達郎、星野源など多数。

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