化粧スレート
軽く、施工しやすい屋根材として戦後の日本で普及した化粧スレート
化粧スレートは、現在の日本の住宅で広く使われている代表的な屋根材のひとつです。
セメントと繊維材料を主原料とした薄い平板状の屋根材で、瓦と比較して軽く、切断などの加工が容易であることが特徴です。
日本では昭和35年にアメリカから技術が導入され、当時は「新生屋根材」と呼ばれていました。その後、昭和後期から成長したプレハブ住宅メーカーが求める「早く、安く、大量に作れる建材」というニーズと、その施工性の良さがマッチしたことで急速に普及しました。
現在では当たり前のように見かける化粧スレートですが、瓦などの伝統的な屋根材と比較すると、その歴史はそれほど古くありません。
ここでは、化粧スレートがどのような屋根材なのか、その歴史から材料、形状、施工方法、メンテナンスまでを屋根技術者の視点から解説します。
1.化粧スレートは戦後に普及した比較的新しい屋根材
化粧スレートは、日本では昭和35年にアメリカから技術導入された比較的新しい屋根材です。
技術導入された当時は、それまでの瓦などとは異なる新しい屋根材という意味から「新生屋根材」と呼ばれていました。
興味深いのは、技術の導入元であるアメリカでは広く普及せず、技術を導入した日本で普及していったことです。
その背景には、戦後の日本における住宅生産の変化があります。
昭和後期になるとプレハブ住宅メーカーが成長し、住宅を工業的に大量生産する時代になりました。そこで住宅メーカーから求められたのが、「早く、安く、大量に作れる建材」です。
化粧スレートは軽量で、1枚が大きく、現場での切断加工も容易です。
さらに、屋根端部を板金役物で仕上げるため、屋根の形状に合わせて化粧スレートを加工するだけで施工が出来るのが和瓦と違っていました。
和瓦の場合、桟瓦や役瓦のサイズに合わせ、屋根寸法を決め、割付を行う「瓦割り」という屋根の設計工程が必要です。
化粧スレートは、この瓦割りを行わなくても屋根が設計・施工出来るのが、プレハブ住宅メーカーにとって非常に重要なポイントになりました。
熟練した屋根職人でなくても、屋根材の施工と板金加工の技術があれば施工しやすいという特徴も、住宅を大量に供給するプレハブ住宅メーカーのニーズに適していました。
化粧スレートの普及は、屋根材そのものの特徴だけでなく、日本の住宅生産が工業化していった時代背景とも深く関係しているのです。
2.セメントと繊維材料で作られた薄い屋根材
化粧スレートは、セメントと繊維材料を主な材料として作られています。
技術導入当時は、繊維材料としてアスベストが使用されていました。その後、アスベストによる健康被害を受けてアスベストを使用しない製品へと移行しました。
2004~2006年の移行期間以降は、パルプやグラスファイバーなどの繊維材料が使用されています。
屋根材の表面には塗装が施され、塗料によって屋根材の色を出しています。
代表的な製品であるコロニアルを見ると、製品寸法は桁方向910mm、流れ方向414mm、厚さ5.2mmです。
わずか5mm程度の薄い平板形状であり、瓦と比較すると1枚の面積が大きいことが特徴です。
また、重量は瓦のおよそ半分であるため、一般的に軽量屋根材として区分されています。
薄く、軽く、大きな平板を基本とすることが、化粧スレートの施工性にもつながっています。
3.大きな重なりと釘による直接固定
化粧スレートは、屋根材同士を上下に重ねながら軒先から棟へ向かって施工します。
代表的なコロニアルの場合、製品の流れ方向長さは414mmですが、実際に屋根面として表面に露出する「働き長さ」は182mmです。
つまり、屋根材の半分以上を上下に重ねながら施工することになります。
この大きな重なりによって雨仕舞いを行うのが、化粧スレートの基本的な考え方です。
施工枚数は1坪あたり約20枚です。和瓦が1坪あたり約53枚であることと比較すると、化粧スレートは1枚で葺くことのできる面積が大きいことが分かります。
固定方法は非常にシンプルです。
化粧スレートにはあらかじめ決められた位置に専用釘を打ち、屋根下地へ直接留め付けます。
また、棟やケラバなどの屋根端部は、屋根材を屋根端部形状に合わせて加工し、その端部を覆うような形で板金役物を使用して納めます。
切断加工も容易なため、屋根寸法に合わせた細かな割り付けを必要とせず、現場で加工しながら施工できます。
こうした「大きな平板を釘で直接固定し、端部は屋根に合わせて切断加工し、切断端部を覆うように板金役物で納める」という施工方法が、化粧スレートの施工性の良さにつながっています。
4.塗装によるメンテナンスと屋根材の耐用年数
化粧スレートを長く使用するためには、メンテナンスについても考える必要があります。
化粧スレートの表面には塗装が施されています。
屋根は日射や雨、風などにさらされ続けるため、表面の塗膜は紫外線や熱などの影響によって徐々に劣化していきます。
そのため、化粧スレートでは15年程度を目安として再塗装工事などのメンテナンスが必要になります。
一方、塗装のメンテナンスと屋根材そのものの耐用年数は分けて考える必要があります。
CASBEE-すまい(戸建)の「屋根材の耐用年数一覧」では、コロニアル葺きの耐用年数は30年とされています。
添付資料の一覧では、コロニアル葺き30年に対して、和瓦・洋瓦は60年と設定されています。
つまり化粧スレートは、施工時には軽量で扱いやすい屋根材ですが、建物を長期間使用していく場合には、表面塗装のメンテナンスと屋根材そのものの更新時期の両方を考える必要があります。
化粧スレートは、施工時の軽さや施工性に優れた屋根材ですが、長期間使用する場合には、表面塗装のメンテナンスと屋根材そのものの更新時期を分けて考える必要があります。
5.まとめ
今回のコラムのポイントです。
- 昭和35年に技術導入された比較的新しい屋根材
- 軽量で加工しやすく、住宅の工業化とともに普及
- セメントと繊維材料からなる厚さ約5mmの平板状屋根材
- 大きく重ね、釘で直接固定し、端部は板金役物で納める
- 瓦のおよそ半分の重量で軽量屋根材に区分される
- 再塗装などのメンテナンスが必要で、CASBEEではコロニアル葺きの耐用年数を30年としている
化粧スレートは、軽量で加工しやすく、施工を標準化しやすいという特徴を持つ屋根材です。
こうした特徴が、戦後の日本で進んだ住宅の工業化や大量供給という時代の要求と合致し、広く普及していきました。
現在では一般的な住宅用屋根材のひとつですが、その材料や施工方法を見ると、「いかに屋根を早く、合理的に施工するか」という考え方が強く反映された屋根材であることが分かります。
一方で、表面塗装のメンテナンスや屋根材そのものの耐用年数も考慮する必要があります。
屋根材を比較するときには、重さや価格だけではなく、施工方法、メンテナンス、耐用年数まで含めて、その屋根材の特徴を理解することが大切です。
次回は、平成後半から令和にかけて屋根材の主役になった「金属屋根材」について詳しく見ていきます。
