金属屋根材
ガルバリウム鋼板とトタン板は何が違うのか
住宅の屋根材というと、かつては粘土瓦や化粧スレートが一般的でした。
しかし現在、急速にシェアを伸ばしているのが金属屋根材です。
住宅金融支援機構の調査では、令和5年度の新築住宅に使われる屋根材のうち、ガルバリウム鋼板またはジンカリウム鋼板が52.5%を占めています。その他の金属屋根材を含めると、現在では住宅屋根の半数以上が金属系の屋根材になっています。
一方で「金属屋根」と聞くと、昔のトタン屋根を思い浮かべる方もいるでしょう。
「トタン板とガルバリウム鋼板は何が違うのか?」
「金属なのに錆びないのか?」
「どのくらい長持ちするのか?」
実は、現在の金属屋根材は、昔のトタン屋根から材料技術が大きく進歩しています。
今回は、日本で1,000年以上使われてきた金属屋根の歴史から、現在主流となったガルバリウム鋼板、そして金属屋根材の耐用年数まで、屋根技術者の視点から解説します。
1.金属屋根材にはどんな種類があるのか
「金属屋根材」といっても、一つの材料を指しているわけではありません。
大きく分けると、鉄鋼系の屋根材と、非鉄金属系の屋根材があります。
鉄鋼系の屋根材には、亜鉛めっき鋼板やアルミニウム・亜鉛合金めっき鋼板などの「めっき鋼板」と、ステンレス鋼板があります。
一方、非鉄金属系では、銅板、アルミニウム、チタンなどが屋根材として使用されています。
現在の住宅で多く使われているのは、鋼板の表面にめっきを施しためっき鋼板を用いた屋根材です。
鋼板そのものは錆びやすい材料ですが、その表面を亜鉛やアルミニウムなどを含むめっき層で保護することで、耐食性を高めています。
つまり、現在の金属屋根材を理解するポイントの一つが、「金属そのもの」だけではなく、「表面をどのように保護しているか」なのです。
2.日本の金属屋根には1250年以上の歴史がある
金属屋根というと比較的新しい屋根材に感じますが、日本における歴史は非常に古いものです。
日本で最初の銅板による屋根の記録は、奈良時代の天平神護元年(765年)まで遡るとされています。
称徳天皇の意向によって東大寺と並ぶ大伽藍として建てられた西大寺の金堂などに、銅塊を瓦状に叩いて加工した「銅瓦」が葺かれたとされています。
つまり、日本ではおよそ1250年前から金属が屋根材として使われてきたことになります。
銅には、時間の経過とともに表面に「緑青(ろくしょう)」と呼ばれる青緑色の錆が形成される特徴があります。
写真は、鎌倉にある極楽寺の本堂の屋根です。この表面の色が緑青の色です。
この緑青が表面を覆うことで、その後の腐食の進行を抑えます。
神社仏閣などの屋根が美しい青緑色になっているのを見たことがある方も多いでしょう。あの色は単なる変色ではなく、長い年月によって形成された銅特有の保護層でもあるのです。
銅板屋根は、耐久性の高い伝統的な金属屋根として現在まで受け継がれています。
3.トタン板からガルバリウム鋼板へ
現在の住宅用金属屋根を理解するうえで重要なのが、トタン板とガルバリウム鋼板の違いです。
実はこの二つは、まったく別の屋根材というより、技術的には兄弟のような関係にあります。
一般に「トタン」と呼ばれるものは、鋼板の表面に亜鉛めっきを施したものです。
安価で加工しやすく軽量だったため、戦後の日本では住宅や工場などに広く使用され、高度経済成長期の建築を支えました。
しかし、従来のトタン屋根には錆びやすいという弱点がありました。塗装によって鋼板を保護しているため、定期的な再塗装も必要になります。
そこで、めっき層の耐食性をさらに高めるために登場したのが、アルミニウムと亜鉛を組み合わせためっき鋼板です。
代表的なものが、55%アルミニウム・亜鉛合金めっき鋼板です。
一般には「ガルバリウム鋼板」という名称で知られています。
写真は、ガルバリウム鋼板を縦長に成形した立平屋根です。流れ方向に屋根材の重なりが無いため、戻り勾配が無く、防水性に優れています。1寸勾配未満の緩勾配にも対応できることが特徴です。
つまり、トタンからガルバリウム鋼板への変化は、
亜鉛めっき → アルミニウム・亜鉛合金めっき
という、鋼板を錆から守る技術の進化と考えると分かりやすいでしょう。
なお、「ガルバリウム鋼板」は一般名称のように広く使われていますが、もともとはアルミニウム・亜鉛合金めっき鋼板の商品名です。
日本では日本製鉄株式会社が「ガルバリウム鋼板」の登録商標を持っています。
4.なぜ金属屋根材が住宅屋根の主役になったのか
金属屋根材が普及した大きな理由の一つが、軽さです。
特に阪神・淡路大震災以降、住宅の耐震性に対する関心が高まり、屋根を軽量化するという考え方が広く知られるようになりました。
その後、東日本大震災や熊本地震などを経て、軽量な金属屋根材は全国の住宅で広く採用されるようになりました。
その変化は、屋根材シェアを見るとよく分かります。
住宅金融支援機構のデータでは、平成7年度にはガルバリウム鋼板またはジンカリウム鋼板の割合は22.6%でした。
それが平成19年度には19.5%、平成24年度28.2%、平成29年度37.8%となり、令和5年度には52.5%まで拡大しています。
一方、粘土瓦は平成14年度の42.6%から令和5年度には11.0%まで低下しています。
およそ30年間で、日本の住宅屋根の主役が大きく入れ替わったことが分かります。
ただし、金属屋根材だからメンテナンスが不要というわけではありません。
現在の住宅用金属屋根材の多くは、めっき鋼板の上にさらに塗装を施しています。
屋根は紫外線、熱、雨、風などに常にさらされるため、時間とともに塗膜は劣化します。
そのため、長期間使用するには塗膜の状態を確認しながら、必要に応じて再塗装などのメンテナンスを行うことが重要です。
5.金属屋根材はどのくらい長持ちするのか
金属屋根材の耐久性は、使用する金属やめっき、塗装仕様によって大きく異なります。
「CASBEE-すまい(戸建)」の屋根材耐用年数一覧では、屋根材の種類によって次のような耐用年数が示されています。
代表的な金属屋根材では、
カラー鉄板(亜鉛めっき鋼板):15年
フッ素樹脂鋼板(塗装ガルバリウム鋼板):30年
カラーステンレス板(塗装ステンレス鋼板):50年
銅板:60年
となっています。
同じ「金属屋根」であっても、その耐用年数には大きな差があります。
ここで注意したいのは、屋根材の耐用年数と、メンテナンス周期は同じではないということです。
たとえば、屋根材そのものに十分な耐久性が残っていても、表面の塗膜が先に劣化することがあります。
そのため、金属屋根を長期間使うには、「何年もつ屋根材か」という数字だけを見るのではなく、めっき層・塗膜・基材がどのような構成になっているのかを理解することが重要です。
金属屋根材は、鋼板材料の技術進歩によって、軽量性と耐久性を両立させた屋根材へと進化しているのです。
6.まとめ
今回は、金属屋根材の種類と歴史、トタンとガルバリウム鋼板の違い、耐用年数について解説しました。
- 金属屋根材には、めっき鋼板、ステンレス、銅、アルミ、チタンなどさまざまな種類がある
- 日本の金属屋根の歴史は古く、銅板屋根は奈良時代まで遡る
- 現在主流の金属屋根材はガルバリウム鋼板を用いた金属屋根材
- トタンとガルバリウム鋼板の大きな違いは、鋼板を保護する「めっき層」にある
- 令和5年度には、ガルバリウム鋼板またはジンカリウム鋼板が住宅屋根材の52.5%を占めている
- 金属屋根材の耐用年数は材料や表面処理によって大きく異なる
- 長期間使用するためには、塗膜などの状態を確認し、適切なメンテナンスを行うことが重要
金属屋根は、日本では1250年以上前から使われてきた歴史ある屋根です。
その一方で、現代の金属屋根材は、昔の銅板やトタンとは異なり、めっきや塗装などの材料技術によって大きく進化しています。
特に住宅用屋根材では、軽量性と耐食性を両立したアルミニウム・亜鉛合金めっき鋼板が普及し、令和の住宅屋根を代表する屋根材の一つになっています。
屋根材を選ぶときには、「金属だから」「ガルバリウムだから」という名称だけで判断するのではなく、どのような金属を使い、どのような方法で腐食から守り、どの程度のメンテナンスが必要なのかまで確認することが大切です。
次のコラムは、「セメント瓦」です。
かつて日本の住宅で広く使われたセメント瓦の特徴や歴史、粘土瓦との違いについて解説します。
