屋根材にはどんな種類があるのか?
〜材質による分類から、それぞれの屋根材の概要を見てみよう〜
街を歩いていると、屋根材にもさまざまな種類があることに気付きます。
また、旅行に行くと旅先で特徴的な屋根の風景を見ることがあります。
この写真は島根県津和野町の写真です。
山陰の小京都として知られる津和野町の屋根は、石州瓦の赤瓦一色です。
江戸時代からの町並みの風景を百年の時間を越えて石州の来待瓦が守り続けています。
私も数年前に津和野に行きましたが、豊かな自然が残っているとても素敵な町でした。
勿論、屋根技術者として、百年以上前からある石州の来待瓦をしっかりと見てきました。
さて冒頭、さまざまな種類の屋根材があると書きましたが、屋根材にはどんな種類があるのでしょうか?
そして、これらの屋根材はどう分類されるのでしょうか?
形状で分類するのであれば、平板形状、R形状。
デザインで分類するのであれば、和風、洋風や伝統的、モダン。
分類の仕方もいろいろありますが、第2章「いろいろな屋根材を知る」で私が採用した分類方法は材質による分類方法です。
「瓦」「スレート」「金属屋根」といった名称はよく耳にしますが、それらがどのような材料で作られ、どのような特徴を持っているのかを体系的に知る機会はあまり多くありません。
そこで本章では、屋根材を材質という視点から分類し、それぞれの特徴を分かりやすく紹介していきます。
1.屋根材の材質ごとの分類
屋根材は、形状やデザインなどで分類することもできますが、本章では材質による分類を採用しました。
屋根材を材質ごとに分類することで、材質の違いから耐久性や重量、メンテナンス性、防水性などの性能の違いを理解し、それぞれの屋根材のメリット・デメリットを知ることが出来るからです。
本章では屋根材を
•窯業系
•金属系
•化学系
•自然系
の4つに分類しています
図には書いていませんが、この分類での最初の分類は窯業系・金属系・化学系を合わせた人工素材屋根材と自然素材屋根材に分かれます。
2.自然素材屋根材と人工素材屋根材
屋根材は大きく分けると、自然界に存在する材料をそのまま利用する自然素材屋根材と、人の手によって加工・製造された材料を使用する人工素材屋根材に分けられます。
日本の屋根材の歴史と照らし合わせてみると、自然素材屋根材は2万年前の竪穴式住居の頃から使われています。
それと比べて、人工素材屋根材は、瓦屋根が大陸から伝わったのが飛鳥時代の1400年前なので、屋根材の長い歴史から見ると、その歴史は全体の約6.5%に過ぎません。
自然素材屋根材には、大きく分けて石系と草木系があります。
太古の屋根材が草木系であることは世界共通です。
日本の自然素材屋根材では草木系が圧倒的に主流で、茅葺だけでなく檜皮葺や杮葺など様々な種類があります。
伝統的な社寺仏閣などの建造物では、今でも草木系の屋根を受け継いで使っています。
日本では、石系の屋根材は少ないですがヨーロッパでは多くの建造物に使われ、明治に入って洋風近代建築が輸入された際に天然スレートも一緒に輸入され、日本で使われ始めました。
一方、多くの住宅で使用されている屋根材は人工素材屋根材として製造されたものです。
粘土を高温で焼き上げた粘土瓦、セメントを成形したセメント瓦やスレート屋根材、鋼板や銅板を加工した金属屋根、石油由来の材料を用いたアスファルトシングルなど、それぞれ異なる技術によって作られています。
たった6.5%の歴史の人工素材屋根材ですが、性能やコスト面から、現在では圧倒的な主流屋根材になっています。
屋根材の歴史は、材料技術の進化の歴史でもあり、材料が進化することで、屋根材性能が向上し、新しい屋根材の歴史を作り続けているのです。
3.窯業系と金属系
現在、日本の住宅で多く採用されている屋根材は、この窯業系と金属系の屋根材です。
全体の9割以上を窯業系と金属系で占めています。
窯業系は、土やセメントなどの無機材料を主原料として製造される屋根材で、粘土瓦、セメント瓦、化粧スレートなどが含まれます。
窯業系屋根材は人工素材屋根材の中では歴史が古く、窯業系の代表的な屋根材である粘土瓦は、1400年前の飛鳥時代に大陸から伝わり、伝統的な建築物では多く使われてきました。
一方、金属系はガルバリウム鋼板やステンレス鋼板、銅板、アルミニウム、チタンなどの金属を加工した屋根材です。
金属系は最近の屋根材というイメージがありますが、日本における最古の銅板葺は奈良時代なので1200年という長い歴史がある屋根材です。
軽量で施工性に優れ、近年では住宅にも数多く採用されています。
人工素材屋根材の歴史においては、時代の変化の中で窯業系と金属系がお互いのシェアを奪い合っている状況が長く続いています。
この屋根材シェア推移のグラフは住宅金融公庫仕様の令和5年住宅仕様詳細調査のデータを引用しています。
平成7年度では窯業系が7割以上占めていますが、直近の令和5年度では金属系が5割以上を占め、市場シェアが逆転しています。
この先も当分の間は窯業系と金属系の争いが繰り広げられると思います。
この二つの屋根材は、それぞれ異なる長所を持っているため、住宅の性能やデザイン、時代のニーズによって主役が入れ替わりながら発展してきたのです。
4.新たに生まれた化学系
比較的新しい分類として、化学系屋根材があります。
代表的なものはアスファルトシングルと、陸屋根に使用されるアスファルト防水やシート防水です。
これらは石油化学製品を主原料としており、防水性能や施工性に優れることから、住宅やビルなど幅広い建築物で採用されています。
アスファルトシングルは、19世紀後半のアメリカで生まれた屋根材です。
アメリカでは、石油産業が急速に発展し、その副産物である「アスファルト」や「タール」が大量に手に入るようになり、これらを原料としてアスファルトシングルが作られました。
産業革命後に生まれた屋根材であり、アメリカでは8割ほどのシェアを持った屋根材です。
日本では防火の観点から普及が難しい状況が続いていましたが、芯材をガラス繊維に変えてから不燃性能が向上し、シェアは5%程度まで伸びています。
次の写真は、アメリカでの一般的な戸建て住宅の写真です。
ここに葺かれている屋根材がアスファルトシングルという屋根材になります。
石油化学技術の発展によって誕生した屋根材であり、屋根材の歴史の中では最も新しいグループであり、従来の窯業系や金属系とは異なる特徴を持っている屋根材です。
5.まとめ:材質による分類から、それぞれの屋根材の概要を知る
今回のコラムのポイントは次です。
屋根材は自然素材を使った自然素材屋根材と人工的に加工して製造する人工素材屋根材がある
歴史的には短いが現在は性能やコストの面から人工素材屋根材がメインになっている
人工素材屋根材は窯業系と金属系が2大勢力であり、9割以上のシェアを占める
産業革命後に生まれた化学系のアスファルトシングルは、アメリカで8割以上のシェアを占めており、日本でも近年増え始めている
屋根材にはさまざまな種類がありますが、それぞれ異なる材料から作られているため、性能や耐久性、メンテナンス方法などが大きく異なります。
本章では、屋根材を「窯業系」「金属系」「化学系」「自然系」の4つに大きく分類しました。
各分類の中からさらに細かく分類して、いろいろな屋根材について詳しく紹介していきます。
この第2章を読み終えた頃には、いろいろな屋根材のことが分かり、街を歩きながら屋根を見るのが楽しくなってくれたらと願っています。
次のコラムでは、日本人に最も長く親しまれてきた屋根材であり、1400年の歴史を持つ「粘土瓦」から見ていきましょう。
これからも、この屋根コラムで後悔しない屋根材選びをするために、いろいろな屋根材について、出来るだけ分かりやすく発信していきたいと思います。
