皆さん、こんにちは。
開発の小栗です。
いろんな小栗がいるように書いていますが、実は同じ人間です(汗)
まぁ、社長業をしながら、技術コンサルタントや製品開発などいろいろやらせてもらっているので、それぞれの目線でブログ記事を書いていこうと思っています。
さて、今日は屋根における少しだけディープなブログを書きたいと思います。
タイトルは「雪止の設置基準」です。
ちなみに弊社も雪止金具の販売をしています。
私が設計開発した三州瓦メーカーさんの屋根材があり、その屋根材向けに作ったオリジナルの雪止金具です。
開発当時はそこそこ売り上げがあったのですが、最近はめっきり少なくなり、寂しい状況が続いています。
三州瓦、頑張れ!
さて、そんな雪止ですが、雪止瓦と雪止金具などが一般的です。
この雪止の写真は、滋賀県米原市の醒ヶ井宿で撮った雪止写真です。
滋賀県では雪を止める輪っかが大きいので、輪大雪止と呼んだりします。
雪止ですが雪国に行くと雪を止めないパターンもあったり、アングルなどを用いて線で止めるパターンなど様々です。
そんな雪止金具ですが、屋根にはどのように設置するのが良いでしょうか?
雪止の設置方法には、建築学会が出している「勾配屋根の材料・構法・性能」という書籍や北海道の建築指導などに基準が載っています。
これらの設置基準をベースに屋根材メーカーなどが基準を作っています。
基本的な考えは、雪止金具の固定強度を試験により求め、屋根にかかる積雪荷重から設置個数を算出し、屋根面に配置します。
算出は、屋根上の雪の滑動力と雪止の雪滑落阻止力から求めます。
屋根上の雪の滑動力を F(kgf/㎡) とし、次のパラメーターと数式で求めます。
d: 勾配屋根の垂直積雪深さ (m)
ρ:屋根積雪の平均密度(kgf/㎥)
θ:勾配屋根の角度(deg.)
μ:屋根面の静止摩擦係数
垂直積雪深さは、地域により異なります。
積雪地の定義は垂直最深積雪量が30cm以上で区分されます。
多雪地域の定義は垂直最深積雪量が100cm以上の地域になります。
雪の平均密度は、垂直最深積雪量が100cm未満の地域では200kgf/㎥、垂直最深積雪量が100cm以上の多雪地域では300kgf/㎥となります。
屋根面の静止摩擦係数に関しては屋根材毎に異なります。
金属屋根など、非常に表面が平滑な屋根材の場合、静止摩擦係数は0とするのがベターです。
スレート瓦などは静止摩擦係数 0.3を用いて計算します。
雪の滑動力 Fは上記パラメーターを次の算出式に代入して求めます。
F=d × ρ × cosθ (sinθ ー μ cosθ)
この式で求めた力と雪止金具の強度で雪止金具の配置を計画することになります。
しかし、実際には金具の強度だけではカバーしきれない部分があります。
雪国ではない地域、例えば東京などで急に大雪が降ると雪に関するクレームが続出します。
一番多いのは、「雪が隣の家に落ちてトラブルになった」というものです。
他には雪止金具が変形した、とか雪の荷重で瓦が割れてしまったなどがあります。
急勾配屋根では雪止金具が機能せずに落雪してしまったケースも経験しました。
私の経験上から、4寸~5寸の通常勾配の場合、線状に雪止を入れた方が良いですが、6寸以上になった場合は軒先は線状に入れますが、軒先1段以降は雪止を点在させて配置した方が面状で雪を支持することが出来るので落雪しにくいと思います。
この経験は、某ハウスメーカーから頂いたクレームを解消すべく、長野の積雪地で模擬屋根を作り試験をした結果をもとにしています。
当時この試験をするのに、新雪をトラックに積んでトラックの荷台から模擬屋根に雪をふりかけるという非常にローテクな方法で試験をしました。
いろいろ、小屋裏側から熱を与えたりしましたが、一番影響があったのは日射でした。
太陽の力は凄いです(笑)
そんなローテクな試験でしたが、試験をやったことで分かることが結構あるんですよね~
とても寒くて地味で大変でつらい試験でしたが、ある程度結論が出ると救われた感じがしました。
結果が出た日の夜に当時の部下たちと一緒に美味しい日本酒を飲んだことは、良き思い出の一コマです。
今日はこれで終わりです。
今日の写真は、滋賀県米原市醒ヶ井宿の梅花藻(ばいかも)です。
それではまたブログでお会いしましょう!
See you soon!