雨から家を守る屋根(前編)

雨から家を守る屋根(前編)|一般施主向けコラム

雨から家を守る屋根(前編)

〜屋根は家の傘。勾配屋根と陸屋根、防水の基本を知る〜

1.屋根は家の傘

家にとって屋根は、雨から人を守る傘です。屋根は家の内部へ水が侵入するのを防ぐ、大切な役割を担っています。

特に日本は世界的にも雨量が多く、屋根の防水性能が十分に確保されていない場合は、家の内部へ水が浸入し、小屋裏や構造材が濡れ、湿気を含むことで劣化・腐朽が進み、家の寿命を短くしてしまうケースも発生します。つまり屋根は、住宅の耐久性を大きく左右する存在なのです。

普通の傘以外にも折りたたみ傘やビニール傘など、用途によっていろいろな種類の傘があるように、屋根にもさまざまな種類の屋根や屋根材があります。屋根・屋根材の形状や素材、防水の考え方を理解することは、後悔しない屋根選びの第一歩になります。

2.屋根の分類と勾配について

屋根を大きく分類すると「勾配屋根」と「陸屋根」の2つに分かれます。

まず「勾配」という言葉ですが、これは傾きという意味です。「勾配=傾斜角度」と理解してください。この言葉のとおり、「勾配屋根」は屋根面に角度が付いている屋根です。

一方で「陸屋根」は、水平という意味で「陸」という言葉を使っています。つまり「陸屋根」は、屋根面に角度がなく水平面な屋根を指します。ただし、まったく角度がないわけではなく、雨水が流れる程度の角度は付いていますので、正確にはほとんど角度が無い屋根が「陸屋根」となります。

勾配の表し方(分数勾配)

次に、屋根にとって非常に重要な言葉である「勾配」について説明します。勾配は傾斜角度です。角度をあらわす単位で最も一般的なのは「度(°)」ですが、建築で勾配をあらわす場合、多く使われるのは分数勾配という表し方です。

分数の形で勾配を表し、例えば 4.5/10 という分数勾配は、分母が水平寸法、分子が垂直寸法をあらわします。水平方向で10cm、垂直方向で4.5cmの高さの時の勾配が4.5/10です。

日本の住宅は尺貫法で表すことが多いため、分数勾配の4.5/10は4寸5分勾配とも言います。これは分母が10寸、分子が4寸5分なので、分子の4寸5分だけを言って勾配を表現します。なお、4.5/10勾配は、傾斜角度に直すと約24.23°になります。

分数勾配の説明図(4.5/10勾配のイメージ)
図:分数勾配のイメージ(4.5/10勾配=4寸5分勾配)

3.勾配屋根と陸屋根の防水の違い

勾配屋根と陸屋根では、防水方法が異なります。それぞれの考え方を整理してみましょう。

勾配屋根:勾配を利用して雨水を流して防水する

勾配屋根は、勾配(角度)によって雨水を流し、防水を行います。屋根勾配がきつい(屋根角度が大きい)ほど水の流れる勢いが強いため、屋根としての防水性能は上がります。逆に、屋根勾配が緩い(屋根角度が小さい)ほど水の流れる勢いが弱くなり、屋根としての防水性能は下がります。

一般的な屋根材と言われている材料を用いる屋根は、基本的にこの勾配屋根と考えてもらって大丈夫です。

陸屋根:防水層で雨水の侵入を防ぐ

陸屋根は、シートなどの防水層で建物内部への雨水の侵入を防ぎます。そのため屋根面の勾配が小さくても防水が可能です。陸屋根は上面がほぼ平らで、屋上利用やデザイン性の高さから、都市部の住宅やRC造によく採用されています。

ほぼ平らな屋根なので雨が溜まりやすく、排水に時間がかかるため、「水が溜まっても防水が出来る」ことが防水の考え方の前提となります。ただし、いつまでも水が溜まるのは、防水層の劣化時に雨漏れへ直結してしまうため、水が排水口に流れるための勾配(角度)を付けます。

この、水が流れるための勾配をあらわす言葉が水勾配です。意味としては屋根勾配と同じで、シート防水・ウレタン防水・アスファルト防水などの防水層で防水します。

防水層による防水方法は、屋根以外でもバルコニーで使われるケースが多くあります。そのため、建物全体の防水を考えるうえでは、屋根勾配水勾配という二つの言葉があると理解しておくとわかりやすいでしょう。

4.まとめ:雨から家を守る方法は屋根の形状により異なる

ここまで見てきたように、雨から家を守る方法は、屋根の形状によって大きく変わります。ポイントを整理すると、次のようになります。

    屋根には「勾配屋根」と「陸屋根」の2種類があり、防水方法は異なる

    「勾配屋根」は屋根の傾きにより、雨水を屋根面で流して防水する

    屋根材を用いる屋根は「勾配屋根」、防水材を用いる屋根は「陸屋根」と考えられる

    「陸屋根」は防水層によって防水し屋根面に雨水が溜まっても防水が出来る

同じ「雨から家を守る」という目的でも、屋根の形状や防水の考え方は大きく違います。この前編では、勾配屋根と陸屋根の基本的な違いと、勾配・水勾配の考え方を解説しました。後編では、屋根材ごとの特徴や、防水性能を踏まえた具体的な屋根選びのポイントについてお伝えしていきます。

筆者紹介

ルーフ エンジニア 小栗
甍エンジニアリング株式会社 代表取締役社長/屋根発明家/「タイルーフ」開発者

屋根の技術に携わり37年。

これまで多くの屋根材を開発してきた屋根技術者で防災平板瓦を発明し日本の発明家46位にランキングされた経歴がある。

これから家を建てる方、屋根のリフォームを考えている方に、屋根に興味を持ってもらい、後悔しない屋根選びをして欲しいという思いから「屋根コラム」の執筆をスタートした。

1966年生まれ・天秤座・O型。

趣味は音楽制作・楽器演奏。

好きなミュージシャンはプリンス、XTC、佐野元春、坂本龍一など多数。

ルーフ エンジニア 小栗

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