1.屋根で変わる住宅の耐久性
〜家を長持ちさせるために知っておきたい屋根のメンテナンス〜
家の寿命は「屋根のメンテナンス」で決まる
「家の寿命を延ばしたい」と考えると、多くの方は家の構造や構造材の仕様などを思い浮かべるのではないでしょうか。
もちろんそれらも大切ですが、実は屋根のメンテナンスが家の耐久性を左右する大きなポイントです。
屋根は、日差し・雨・風・雪といった自然の影響を一年中受け続ける場所で家の部位の中で最も過酷な部位です。
屋根の劣化を放っておきメンテナンスを怠ると、雨漏りに繋がり構造材の腐食を招き、建物全体の寿命を縮めてしまいます。
「家を長持ちさせるためには、屋根を計画的にメンテナンスし長持ちさせる」ことがとても重要なのです。
日本の住宅寿命はなぜ短いのか?
国土交通省の調査によると、日本の住宅の平均寿命はおよそ30年と言われます。
一方で、イギリスでは約80年、アメリカでも約60年と、日本よりはるかに長い住宅寿命です。
日本では、欧米よりも雨が多く、台風やゲリラ豪雨などの自然条件が厳しいうえ、定期的に家をメンテナンスして長く住むという文化が欧米と比べ希薄なので屋根のメンテナンス不足により屋根の寿命を縮め、その結果として建物全体の寿命を縮めているケースが見られます。
また屋根はメインの屋根材だけでなく下葺き材や板金部材、釘やビス、シーリング材などの複合材料で構成されているので、屋根部材毎に劣化速度が異なります。紫外線劣化、熱劣化、酸性雨、塩害、凍害などの劣化要因も複合的に関わってくるので、これらを考慮した適切な屋根のメンテナンスは出来ているとは言えない現状があります。
更に日本ではこれまで屋根業界が新築ビジネスだけに注力してきた歴史的背景もあり、現段階において屋根のメンテナンス計画の体系的な整備が確立されていません。
今後は、屋根を計画的にメンテナンスし長持ちさせることで住宅の耐久性を上げることが求められています。
屋根材によってメンテナンスが変わる
| 屋根材の種類 | メンテナンスの目安 | メンテナンスの特徴 |
|---|---|---|
| スレート瓦(化粧スレート) | 約10〜15年 | 屋根材の塗膜が劣化するので再塗装が必要。基材の劣化から30年後には葺き替えが必要 |
| 陶器瓦・いぶし瓦 | 約20〜50年 | 屋根材の耐久性は高いが下葺き材、板金、桟木、シーリング材などの劣化を考慮したメンテナンスが必要 |
| 金属屋根(ガルバリウム鋼板など) | 約15〜20年 | 屋根材の塗膜が劣化するので再塗装が必要。日本海側で沿岸地域では海塩粒子による塩害の影響があり、地域条件によってメンテナンスサイクルも変わる |
| タイルーフ(磁器屋根材) | 約60年 | 60年間メンテナンスフリーの部材選定をしている。下葺き材が劣化した場合、屋根材を簡単に取り外し再利用が出来る製品設計になっている |
「屋根のメンテナンス計画」と「国の制度」の関係
屋根材を最初に選ぶとき屋根のメンテナンス計画が屋根材毎に異なることを理解し、屋根材を選ぶことをおすすめします。
屋根を計画的にメンテナンスすることで住宅の耐久性を高める方法は国の住宅制度としても行っています。屋根の維持管理について長期優良住宅制度と住宅性能表示制度として制度化されいます。
長期優良住宅制度と屋根の維持管理
長期優良住宅制度は「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」という法律で「良い家をつくって、きちんと手入れして、長く大切に使う」という住宅文化を広めるための制度です。
良質な家を作ることは、家の資産価値を高めることに繋がります。
また、住宅を建てる際の温室効果ガスの削減や建築廃材の削減にも繋がり環境負荷の低減にも繋がります。
住宅ローンが終わったあとも子どもたちや孫たちがその住宅を長く使うことで、住宅にかける経済的な負担が減り、国民の生活の質を高めることに繋がるのです。つまり、家の寿命を長くすることは、将来的に日本人が豊かに暮らすためにとても大事な取り組みなのです。
長期優良住宅制度では、評価項目のひとつに「維持管理・更新の容易性」が設けられ、屋根を含む外装の点検・修繕がしやすい計画や仕様が求められます。
住宅性能表示制度(住宅の品質確保法)と屋根の維持管理
住宅性能表示制度は、国が定めた 共通の「ものさし」 で住宅の性能を評価し、住宅の品質を明確にするための制度です。
住宅性能表示制度は以下の10項目で住宅を評価し、国が定めた基準をもとに数値化(等級)します。
屋根の仕様やメンテナンスについては、劣化の軽減や維持管理・更新への配慮が該当し、住宅性能としてを評価をします。
屋根の劣化の軽減・維持管理・更新の容易性の重要性を国の住宅制度に組み込むことで、「屋根の計画的な維持管理」が社会全体での仕組みとなるように促しています。
