縄文時代から屋根のメンテナンスは有った!?技術者が解説します

縄文時代から屋根のメンテナンスは有った!?|一般施主向けコラム

縄文時代の屋根から見えてくる、いま必要な屋根メンテの考え方

〜縄文時代の屋根に見る、住まいと屋根の関係性〜

日本の屋根の歴史は瓦?

日本の瓦の歴史はたったの1400年・・・

しかし、日本人は瓦が生まれる遥か以前から、雨と戦いながら屋根を作っていました。

屋根は人類が住居を手にしたときからずっとありました。

その原点は、約2万年前の縄文時代の竪穴住居にまでさかのぼります。

3_2_fig1
図:竪穴式住居の外観イメージ

縄文時代の住居は、地面を掘り下げ、その上に木と草で大きな屋根を掛けたものでした。

現代の住宅のように、壁・窓・断熱材・防水シートがあるわけではありません。

しかしそこには、すでに日本人の「雨への知恵」がありました。

世界平均の約2倍とも言われる降水量。

湿気の多い気候。

台風、梅雨、積雪。

季節や地域によって大きく変わる気温。

日本の屋根は、こうした自然と向き合いながら進化してきました。

その始まりが、縄文時代の屋根だったのです。

1.縄文時代は屋根が住居の主役

縄文時代の代表的な住居は「竪穴住居」と呼ばれるものです。

地面を50cm〜1mほど掘り下げ、その周囲や中央に柱を立て、木の骨組みをつくり、その上に草や枝を厚く葺いて屋根をつくっていました。

穴を掘ることで壁を作り、穴に柱を立て、柱に屋根を掛けた竪穴住居はまさに屋根が主役の 住居です。

3_2_fig2
図:竪穴式住居の構造

住居の基本的な機能は、雨・風・強い日差しから人を守ることです。

そして、その基本的機能は屋根の基本的機能でもあるのです。

キャンプのテントがそうであるように、屋根だけで住居における最低限の機能(雨・風・強い日差しから人を守る)は満たされるのです。

縄文時代の住居は、むしろ大きな屋根の下で暮らしているという感覚に近い構造でした。

地域や時代によっては、屋根が地面近くまで下りているものもあり、屋根と壁の境界が曖昧な住居もあったと考えられています。

つまり縄文人にとって、住居とは「壁のある箱」ではなく、

雨・風・暑さ・寒さから身を守るための“覆い”だったのです。

また、地面を掘り下げた半地下構造には、夏は涼しく、冬は暖かく、風の影響を受けにくい という効果もあったと思います。

2.勾配で雨を取る屋根

縄文時代の屋根を見てまず気付くのが、急な屋根勾配です。

勿論これは単なるデザインではありません。

理由は二つあります。

一つは、急勾配にすることで居住スペースを確保することです。

屋根の内部空間そのものが住居空間になるので、屋根が急勾配であれば高さが出来て居住空間が広くなる理屈です。

もう一つは、防水性、耐水性の低い屋根材で雨を防ぐためです。

日本は雨の多い国です。

さらに雪が降る地域もあります。

もし屋根勾配が緩ければ、草木系の屋根材では雨水が内部に浸透しやすくなってしまいます。

3_2_fig3
図:縄文時代の住居の断面イメージ

そこで縄文人は、水を止めるのではなく、水を素早く流すという考え方で屋根をつくっていました。

雨仕舞いの概念であり、雨仕舞いの手法に「水を切る」「水を抜く」「水を殺ぐ」「水を導く」があります。

現代屋根でも使われるこの「雨仕舞い」の考え方は、実は縄文時代の屋根にも見ることができます。

縄文時代の屋根は、

 

急勾配で雨を排水し → 「水を切る」「水を抜く」

厚く重ねた草で表面張力を利用し雨水の浸透を遅らせ → 「水を殺ぐ」「水を導く」

雨が止んでから風で屋根材を乾燥させる。

 

このプロセスにより縄文時代の屋根は雨から人々の暮らしを守っていたのです。

3.屋根材の起源は草木系

縄文時代の屋根材には、

茅(かや)

葦(あし)

木の枝

樹皮

など、その地域で簡単に手に入る自然素材が使われていました。

3_2_fig4
図:草木系屋根材のイメージ

特に茅や葦は、厚く重ねることで排水性を高めることができました。

副次的な効果として断熱性を高めることも出来ますが、屋根材としての一番の狙いは厚く重ねることによる耐水性の向上です。

草木系の屋根材は軽量で加工しやすいというメリットもありますが、耐水性、耐久性が低いというデメリットがあります。

4.屋根のメンテナンス文化は縄文から始まる

草木系の屋根材は、耐水性が低いので厚く重ねることで耐水性を向上します。

厚く重ねることで表面張力を利用し、雨水を重ねた屋根材に留めることで雨水の浸透を防ぐ仕組みです。

そのため、完全に乾燥しないと腐ります。

草木系の屋根材においては、耐水性と耐久性はトレードオフの関係にあるのです。

そのため、草木系の屋根材はメンテナンスが必要になります。

ただ、草木系の屋根は傷んだ部分だけ交換できるという特徴もあり、傷んだら交換するという、屋根のメンテナンス文化が縄文時代から始まったと言えます。

ちなみに縄文時代の屋根の直系であり進化系である白川郷の茅葺集落の屋根においては住民約200人が協力して30年毎に葺き替え作業をしています。

屋根は自然環境にさらされ続ける部位です。

雨、紫外線、風、湿気。

雨が多く高温多湿な日本の屋根は、常に厳しい環境に置かれています。

縄文時代の人々は、そのことを理解し

 

葺き替える

補修する

草を足す

傷んだ部分を直す

 

という屋根のメンテナンス文化が縄文時代から始まったと考えられます。

5.まとめ:縄文時代の屋根に見る、住まいと屋根の関係性

今回のコラムのポイントは次です。

    縄文時代の住居はほとんど屋根

    「雨・風・強い日差しから人を守る」という住居の基本性能は屋根の基本性能と同じ

    急勾配屋根は、居住空間を作り、雨を防ぐ

    屋根のメンテナンスは縄文時代から始まり現代まで続いている

縄文時代の住居は、現代住宅と比べれば非常にシンプルです。

しかしそこには、

雨を流す勾配

自然素材の活用

定期的なメンテナンス

など、屋根の知恵の原点があります。

日本の屋根は、雨の多い国で暮らきた日本人の知恵の積み重ねです。

そしてその原点は、縄文時代の草屋根にあったのかもしれません。

現代の屋根もまた、縄文時代から続く「雨との付き合い方」の延長線上にあるのです。

 

これからも、この屋根コラムで後悔しない屋根材選びをするために、日本の屋根の歴史や技術、そして未来について、出来るだけ分かりやすく発信していきたいと思います。

住宅の耐風性能を数値で確認する

建築条件を入力することで、屋根に作用する風圧力を算出し、 タイルーフの耐風性能との比較により安全性を確認することができます。

耐風性能を確認する

■ 関連コラム

筆者紹介

ルーフ エンジニア 小栗
甍エンジニアリング株式会社 代表取締役社長/屋根発明家/「タイルーフ」開発者

屋根の技術に携わり37年。

これまで多くの屋根材を開発してきた屋根技術者で防災平板瓦を発明し日本の発明家46位にランキングされた経歴がある。

これから家を建てる方、屋根のリフォームを考えている方に、屋根に興味を持ってもらい、後悔しない屋根選びをして欲しいという思いから「屋根コラム」の執筆をスタートした。

出来るだけ分かりやすく科学的な根拠を持った屋根コラムを心がけている。

屋根に関する様々なことを定性的、定量的に捉え、屋根の技術者として「こだわりの屋根コラム」を高い熱量で執筆している。

1966年10月生まれ・天秤座・O型。

趣味は音楽制作・楽器演奏・歌唱。バンドではベース、ボーカル等を担当。演奏楽器はギター、キーボード、ハーモニカ、ウクレレ、三線など多岐にわたるマルチプレーヤー。楽曲製作では、作詞、作曲、アレンジ、打ち込み、演奏、録音、ミックス、マスタリングと全ての制作プロセスを一人で行う。

好きなミュージシャンはプリンス、XTC、コステロ、デビッドボウイ、カーズ、ELO、EW&F、佐野元春、大滝詠一、坂本龍一、YMO、山下達郎、星野源など多数。

ルーフ エンジニア 小栗

© 2026 甍エンジニアリング株式会社. All Rights Reserved.

PAGE TOP