紫外線・太陽熱から家を守る屋根(後編)
〜太陽熱による熱劣化の屋根における影響、熱劣化劣化のメカニズム、ルーフィングが受ける熱劣化〜
1.屋根材の塗膜は太陽熱で劣化スピードが上がる
金属屋根材と化粧スレートは表面に塗料を塗ることで、意匠性と同時に基材を保護して耐久性を高めています。
そのため、屋根材の塗膜が紫外線で劣化し、褪色現象やチョーキング現象など発生したら、屋根のメンテナンスのサインなので、再塗装若しくは葺き替えといった屋根のメンテナンスが必要になります。
この紫外線劣化のメカニズムですが、実は紫外線だけでなく熱も関係しています。
屋根は太陽光エネルギーを思いっきり受ける部位ですので非常に高温になります。
ちなみに、夏場での屋根材表面温度は70~80℃ぐらいまで上がります。
目玉焼きが焼ける温度です。
このような高温条件下では分子の運動エネルギーは非常に高いので、紫外線によるラジカル連鎖反応の反応速度が指数的に上がるのです。
高分子の反応速度は10℃上がるごとに2.2倍程度上がるアレニウスの経験則が知られていますが、屋根材の表面温度が80℃であれば平均大気温度の20℃と比べて60℃も温度が高いので、反応速度は2.2の6乗となります。
2.2の6乗なので反応速度は113倍の反応速度になるのです。
つまり、通常の生活での有機化合物の紫外線劣化速度と比べて屋根上での有機化合物の劣化速度は113倍なので、夏場の通常生活の1ヶ月は屋根上では1年に相当する訳です。
10~15年程度で屋根材の塗膜が劣化し、再塗装などの屋根メンテナンスが必要になる理由は、紫外線劣化だけでなく熱劣化により劣化が加速される複合劣化のためなのです。
2.熱劣化のメカニズム
熱劣化とは、材料が高温環境で化学変化・形状変化を起こし、性能が落ちる現象のことです。
熱劣化は、材料の分子が熱で動きが活発になり、酸化反応が促進されることで起こります。
他にも熱による材料の膨張・収縮の繰り返しによっても表面クラックなどが起こり劣化します。
特に屋根材の環境下においては、夏場の夕立など高温化にある屋根材が夕立の雨によって一気に冷却され、高温で膨張していた基材と塗膜が冷却により一気に収縮し、塗膜表面にクラックが発生します。
屋根の熱劣化は次のようなステップで進行し、雨漏れのリスクを増大させます。
【太陽熱による高温化(70〜80℃)】
│
▼
① 分子運動の加速 → 結合が弱くなる
│
▼
② 熱酸化(高温+酸素で劣化が加速)
│
▼
③ 材料の膨張・収縮(熱伸縮)
│
▼
④ 物理的ストレスの蓄積
・塗膜のひび割れ
・金属屋根の伸縮疲労
・化粧スレートの反り
・アスファルトシングルのめくれ
│
▼
⑤ ルーフィング(下葺材)の劣化
・硬化
・ひび割れ
・防水力低下
│
▼
【最終結果】
屋根材+下葺材の複合劣化 → 雨漏りリスク増大
3.ルーフィング(下葺き材)について
熱劣化の⑤ステップでルーフィング(下葺き材)の劣化と記載しましたが、まだルーフィングについて解説していなかったので、ルーフィングの熱劣化について説明する前に簡単にルーフィングについて説明します。
勾配屋根における防水方式は、屋根材の1次防水とルーフィング(下葺き材)の2次防水により防水をしています。
特に陶器瓦や化粧スレートは屋根材だけでは雨を完全に防水できない為、ルーフィングとのセットで防水をしています。
木下地の勾配屋根ではほぼ100%使われているルーフィングですが、日本においてそのルーフィングの主流はアスファルト系のルーフィングです。
アスファルト系のルーフィングは、グレードの違いでアスファルトルーフィングと改質アスファルトルーフィングの2種類に分かれます。
アスファルトルーフィングは、フェルト紙を基材にしてアスファルトを含侵させたものになり、改質アスファルトルーフィングは、基材を不織布にしてアスファルトにゴム成分を加えたものになります。
改質アスファルトルーフィングは、アスファルトルーフィングよりも釘穴止水性、耐久性(耐熱性)、引き裂き強度が向上しています。
マニアックに見ると改質アスファルトルーフィングはさらに細かくグレードがあり、その性能は大きく異なりますが、詳しい説明は別のコラムで書きますのでここでは端折らせて頂きます。
4.ルーフィング(下葺き材)の熱劣化
ルーフィング材は屋根材の下に施工する為、熱劣化が主な劣化要因と考えられます。
ルーフィングで防水機能を発揮するアスファルト成分ですが、熱による熱酸化劣化反応によって油分が揮発し、更にレジン成分がアスファルテンに転化することで脆化し、その結果ルーフィングの防水機能である釘穴シール性が低下します。
熱劣化については、前述の通り分子の活性化エネルギーが増大するので酸化反応が促進されます。
ここで注意が必要なのはルーフィングが受ける熱環境の違いです。
屋根材毎にルーフィングと屋根材の関係により、熱劣化する熱エネルギーの伝わり方が異なります。
最もルーフィングの熱劣化が早いのは縦葺きの金属屋根材です。
ルーフィング表面に熱伝導性が高い金属屋根材の裏面が全面で接するため、屋根材が受けた太陽熱エネルギーを伝える為、熱劣化が最も進みます。
また、化粧スレートやアスファルトシングルなども流れ方向で半分以上重ね張りして施工する構造の為、ルーフィング表面と化粧スレートの間の空間が非常に少なく熱を伝えやすく構造なので熱劣化は促進されます。
陶器瓦が最も屋根材とルーフィング間に空間がある為、ルーフィングの熱劣化は少ないと言えます。
つまり、ルーフィングの耐久性を上げるためには屋根材とルーフィングの間に空間を設ける事なのです。
当社が開発した「タイルーフ」は、陶器瓦と同様に屋根材とルーフィングの間に空間を設けているので下葺き材への熱伝導性が低く、熱劣化が進みにくいため、金属屋根材や化粧スレートと比べてルーフィングの耐久性が向上する屋根材です。
5.熱劣化の影響が大きい屋根材ランキング
熱劣化の影響を受けやすい順に並べると次の通りです。
1位 アスファルトシングル
ガラス繊維基材にアスファルトを含侵させた基材であり、表面の砂粒から熱が伝わりアスファルト成分が熱劣化します。
熱により、アスファルト成分が軟化することで防水性を高めますが、アスファルトルーフィングと同様に熱劣化によりアスファルト成分が脆化して劣化が進みます。
2位 化粧スレート
塗膜の劣化が顕著です。製品特性、屋根への固定方法などから太陽熱の影響で反りなどが発生しやすく、塗膜の劣化が促進されます。
3位 金属屋根材(横葺き)
金属屋根材(横葺き)は、裏面に発泡ウレタンの断熱材があるため、金属屋根材に熱が溜まり屋根材表面温度が高くなります。
そのため、金属屋根材(縦葺き)よりも金属屋根材の塗膜が受ける熱エネルギーは高くなり塗膜の熱劣化が促進されます。
4位 金属屋根材(縦葺き)
塗膜の熱劣化が顕著です。流れ方向に長尺なので熱伸縮の繰り返しで塗膜が劣化します。また、熱の影響は塗膜以外にも熱伸縮の繰り返しで留め付け部の釘の緩みが発生します。
6位 陶器瓦
表面は有機化合物の塗料ではなく、ガラス質の釉薬であり熱劣化を受けません。
ただし、基材が多孔質の陶器素材の為、夏場の夕立の際に表面の釉薬が急激に冷却されると釉薬面に微細なクラックが発生し、そのクラックから酸性雨が浸入すると釉薬の変色に繋がってしまいます。
7位 タイルーフ
表面は有機化合物の塗料ではなく、ガラス質の釉薬であり熱劣化を受けません。
陶器瓦よりも焼成温度が高く、基材は吸水性が1%未満の磁器素材の為、釉薬と基材との密着度が高く、夕立の様なヒートショックが発生しても釉薬面にクラックは発生せず、熱劣化の無い屋根材です。但し、タイルーフ本体の固定に使用するステンレス製(SUS304)のストッパー金具はタイルーフ本体の色に合わせてアクリル樹脂塗料で着色している為、熱劣化を受けます。ただし、ステンレス鋼板(SUS304)は塗装が無い素地状態でも設計耐用年数は60年なので着色層が劣化しても製品性能的には問題はありません。
6.まとめ:熱劣化は屋根材だけでなくルーフィング(下葺き材)にも影響を及ぼす
今回のコラムのポイントは次です。
金属屋根材や化粧スレートの塗膜は、紫外線劣化と熱劣化が複合的に作用して劣化が進む
夏場の屋根の温度上昇は劣化を指数関数的に早める
ルーフィングは熱劣化を必ず受けるので全ての屋根材においてルーフィング交換は必要
屋根材によって熱劣化を受ける影響が異なる
屋根材の劣化は、紫外線劣化と熱劣化が複合的に作用して劣化を促進させます。
また、紫外線劣化、熱劣化を受けない陶器瓦やタイルーフ(磁器屋根材)であっても、ルーフィングは熱劣化がある為、ルーフィング劣化時のルーフィング交換は全ての屋根材において共通の屋根メンテナンスになります。
また、屋根材毎にルーフィングに熱を伝える度合いが異なることから、ルーフィングの劣化影響が異なります。
これらのことは、あまり世の中に情報発信されていません。
後悔しない屋根材選びをするために、出来るだけ分かりやすさを心がけて科学的な根拠を持った情報をより多く発信していきたいと思います。
