紫外線・太陽熱から家を守る屋根(前編)
〜紫外線・太陽熱から家を守るための屋根の役割、紫外線劣化のメカニズム、紫外線劣化の影響を受ける屋根材〜
1.屋根は紫外線と太陽熱による最も過酷な部位
屋根は太陽からの日差しを遮るためにとても重要な部位です。
もし家に屋根が無ければ、太陽の日差しを遮る手段が無くなり、快適に過ごすことが出来なくなります。そもそも屋根が無ければ家とは言えないのではないでしょうか。
太陽からの日差しですが、エネルギーはとても強く、その中でも紫外線エネルギーは有機物を分解する力を持っています。
さらに、太陽からの熱エネルギーにおいても、有機物の劣化を促進させるエネルギーを持っています。
つまり、屋根は太陽から降り注ぐ紫外線と熱エネルギーを自ら浴びて遮ることにより、静かに家を劣化から守っているのです。
屋根材は常に日光にさらされ、特に夏場では 70〜80℃ まで屋根の温度は上昇します。この太陽から降り注がれる紫外線と熱エネルギーにより、屋根材やルーフィング(下葺き材)の劣化は進みます。
屋根は家の「太陽光における最前線」であり、屋根材の紫外線と熱による劣化をどう計画的にメンテナンスするのかは、家の長寿命化にも繋がっていくのです。
今回のコラムでは、屋根材の紫外線劣化の仕組みを中心に解説し、屋根材毎の劣化影響などを知ることで、後悔しない屋根選びの基本知識を身に付けて頂きたいと考えています。
2.紫外線による有機物の分解メカニズム
屋根や家の紫外線による劣化の仕組みや影響を知るために、先ずは紫外線が物質をどのように分解するのかを解説します。
紫外線が分解する物質は有機物になります。
特に樹脂などの有機化合物が劣化の対象になると考えてください。
有機化合物である樹脂は、炭素分子の結合で成り立っていますが、この分子結合が紫外線で切断されることで有機物が分解し劣化します。
紫外線劣化のスタートは紫外線エネルギーにより有機物の分子結合が切断されることでスタートします。
光分解した不安定なラジカルの分子が発生し、そのラジカルが周りの分子結合を切断することで更にラジカルが発生するラジカルの連鎖反応が起こり有機化合物の分解劣化が進みます。
この分子結合を切断し発生した不安定なラジカルは空気中の酸素と結合し、安定化した酸化物になります。
紫外線によってこの一連の化学反応が進み有機化合物が分解されることを紫外線劣化と言います。
塗膜が紫外線劣化により白い粉になることをチョーキング現象と言いますが、この白い粉は有機化合物を光分解したラジカルが酸素と結合することで出来た物質であり、紫外線劣化が進んでいることをあらわします。
また、屋根材表面の色が白っぽく褪色する色褪せも紫外線劣化が進んでいることをあらわします。
3.紫外線劣化の影響がある屋根材と無い屋根材
紫外線による劣化のメカニズムに記載した通り、紫外線で分解する対象物質は有機物です。
つまり、有機物を含んでいるか否かで紫外線劣化の影響の有無が分かります。
先ずは紫外線劣化の影響がある屋根材です。
<紫外線劣化を受ける屋根材>
- 化粧スレート:表面の塗膜が紫外線劣化する
- 金属屋根材:表面の塗膜が紫外線劣化する
- アスファルトシングル:基材のアスファルトが紫外線劣化する
- セメント瓦:表面の塗膜が紫外線劣化する
<紫外線劣化を受けない屋根材>
- 陶器瓦:着色層はガラス質の釉薬であり無機質のため劣化しない
- タイルーフ(磁器タイル屋根材):着色層はガラス質の釉薬であり無機質のため劣化しない
<紫外線劣化を受ける屋根材のメンテナンス>
化粧スレートや金属屋根材は、表面の塗膜で基材を保護し、耐久性を高めています。そのため、紫外線劣化による表面塗膜の劣化を放置すると屋根材の基材劣化が始まり、屋根材の腐食や基材強度の低下から穴あきや割れなどが発生すると屋根からの雨漏れに繋がってしまいます。
屋根からの雨漏れが始まれば家は急速に劣化してしまいます。
化粧スレートや金属屋根材が 10~15 年毎に再塗装メンテナンスが必要なのは、塗膜の紫外線劣化を再塗装によりリセットする為なのです。
化粧スレートや金属屋根材の他に紫外線劣化を受ける屋根材としてアスファルトシングル屋根材という屋根材があります。
アスファルトシングル屋根材はアスファルトを主成分としていますが、アスファルト自体が有機物なので、最も紫外線劣化の影響を受ける屋根材です。
アスファルトシングルの場合、塗り直しなどが出来ない為、紫外線劣化が進むと屋根材の葺き替えが必要になります。
アスファルトは紫外線によって主成分である油分が酸化し、硬化、脆化が起こり、ひび割れが生じます。アスファルトシングルの主原料であるアスファルトが劣化し、ひび割れなどを放置すると屋根からの雨漏れに繋がります。
4.屋根材の紫外線劣化メカニズム
屋根材における紫外線劣化のメカニズムをまとめました。
化粧スレート、金属屋根材の表面塗膜の劣化及びアスファルトシングルの基材劣化は次のように起こります。
【紫外線照射】
│
▼
① 分子結合の破壊(光分解)
│
▼
② ラジカル発生(不安定分子)
│
▼
③ 連鎖反応で周囲の分子を破壊
│
▼
④ 酸素と反応 → 光酸化(劣化加速)
│
▼
⑤ 表面の劣化
・色あせ
・チョーキング(粉化)
・塗膜の硬化・ひび割れ
・樹脂の脆化
│
▼
【最終結果】
屋根材の防水性低下 → 寿命短縮
5.まとめ:屋根の紫外線劣化は雨漏れに繋がり、雨漏れは家の劣化に繋がる
屋根は紫外線を遮り家の劣化を防ぎますが、遮る屋根は紫外線により劣化を受けます。屋根の劣化を放置すると雨漏れに繋がり、雨漏れが発生すると家は急速に劣化してしまいます。
紫外線劣化におけるポイントは次のとおりです。
化粧スレート、金属屋根材は表面の塗膜が紫外線により劣化する
紫外線劣化はセラミックス(無機素材)系の陶器瓦、タイルーフでは発生しない
アスファルトシングル屋根材は主成分であるアスファルトが紫外線で劣化する
紫外線劣化による屋根材の劣化を放置すると雨漏れに繋がり最悪の事態となる
紫外線・太陽熱から家を守る屋根(後編)では、熱劣化のメカニズムを解説します。
また、屋根材と共に屋根を防水しているルーフィング(下葺き材)は熱劣化による影響が大きく、ルーフィングの劣化による雨漏れのリスクについても解説します。
